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──あの頃に戻りたい。
空を見上げる佑里斗の心は泣いていた。
◇◇◇
高校三年生。
施設で育った高津 佑里斗にはお付き合いをしている人がいる。
4歳年上の羽田 隆志はアルファで、オメガの佑里斗が大学に進学すると同時に番になろうと二人で決めていた。
それなりに頭が良く、努力家であった佑里斗は狙っていた大学に特待生として入学することができ、それから同棲を始めて、最初の発情期で念願の番になれたのだ。
佑里斗は大学にアルバイトにと忙しかったが、毎日が幸せだった。
新社会人となった彼は帰りがだんだんと遅くなって行き、大学やアルバイトから帰宅した佑里斗が家事や料理をすることがほとんど。
けれど、それでも帰ってきた彼が自分の作った料理を「美味しい」と言って食べてくれるのは嬉しかった。
──それなのに。
番になって約半年。
佑里斗の目の前で土下座をする隆志の姿があった。
「本当にごめん……っ!」
「……い、意味が、わかんないん、だけど……」
つい先程、「話がある」と言われ何だろうと少し不安に思っていたのだが、その不安が的中した。
なんと隆志は浮気をしていたのだ。
段々と遅くなっていた帰宅時間は、どうやら仕事終わりに浮気相手と会っていたようで。
しかも、相手との間に子供ができたらしい。
佑里斗は呆れを通り越して幻滅した。
何も言えなくなり、黙ったまま頭を抱えて椅子に座る。
子供を育てるのにはお金がかかる。
浮気相手が一人で子供を育てていくにはきっと時間も余裕も無いだろう。
土下座をしたまま動かない隆志に深く息を吐いた。
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