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「ただいま」
「ヒロくん、おかえりなさい」
いつも通り笑顔で出迎えてくれる。
「あのさ、話があるんだけど……」
真剣な表情でハルを見つめる。
「ヤダ! 聞きたくない!」
ハルは踵を返して、リビングに走っていく。なぜ逃げられたか分からず、呆気に取られる。我に返って靴を脱いで追いかけた。
ハルはソファの横でクッションを抱えながら体を丸くして震えていた。ハルの前に座ると、体がビクリと跳ねる。
「なぁ、何で話聞くの嫌なの?」
俺は知らないうちに何かしてしまったのだろうか。
「ヤダよ、だって別れたくないもん。絶対に聞かない!」
「えっ? 何で別れ話だと思ったの? 全然違うよ?」
俺が好きだって気持ちがハルには伝わってないのか?
「……違うの? ヒロくんは僕のことが好きだから付き合ったわけじゃないでしょ? それでも僕は一緒にいられるだけで嬉しかった。真剣な顔で、話がある、って言われたら別れ話かと思うじゃん」
「あー、気付いてたんだ。正直、最初は好きでもなかった。でも今は違う。ハルが好きだよ。一緒にいるうちに、どんどん好きになっていった。さすがに好きでもないのに1年も一緒にいるわけないじゃん」
「でも、好きって言われたことないし。今日初めて好きって言ってもらった」
嬉しい、とボロボロ大粒の涙を流すハルを抱きしめた。告白された時とは違い、嬉しいと泣く姿が愛おしくて、自然と抱きしめていた。
落ち着かせようと背中をトントンとあやし、今まで言わなかった分、好きだと伝えた。また泣きだして、落ち着いたのはだいぶ時間が過ぎた頃。
「あの、じゃあ話って何?」
ハルは泣き腫らした顔をクッションに埋めて隠す。
「あのさ、俺、太っただろ?」
「付き合う前よりは太ったかな? 毎日見てるとあまり分からないよ」
「15キロ増えてた。健康診断で医者に食事と運動の指導された。だから、ハルのご飯いっぱい食えなくなった、ごめん」
ハルは顔を上げて、俺の体を注視する。
「それがヒロくんのお話?」
「そう、だから別れ話じゃない」
「うん、でも僕のせいだよね。だったら、明日から美味しくて満足できる、高タンパク低カロリーのメニューを作るよ!」
「いや、ハルが俺に合わさなくても。ハルは細いからそれより減ったら困るだろ」
「僕は太りも痩せもしないと思う。昔っから食べても食べなくても薄いままだし」
「って事は、俺はハルの作るご飯我慢しなくていいのか?」
「うん、食べて欲しい。僕もごめんね。いっぱい食べてくれるの嬉しくて、健康の事考えてなかった。急に増えたらお医者さんに言われるの当たり前だよね」
「ありがとう、明日から頼むよ」
「今日は? 作り直そうか?」
「勿体無いだろ。でも、おかわりは我慢する」
「分かった、温め直すから食べよ」
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