幸せ太り

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 美味しい食事を腹八分目に止め、風呂に入る前に筋トレでもしようと試みる。  体が重くて腕立て伏せが数回しか出来なかった事に驚きを隠せない。  それならば腹筋にしよう、と仰向けになった時、食器を洗い終わったハルがリビングに戻ってきた。 「筋トレしてるの?」 「ああ、朝走って、夜は筋トレしようと思って。……なぁ、足押さえてくれないか?」 「いいよ、任せて」  膝を曲げる。ハルが両手で足首を押さえた。 「遠い! 顔が俺の膝上あたりにくるようにして」  首を傾けて、戸惑いながらすぐに頷いてくれた。前のめりになって、ハルの顔が膝上数センチの位置で止まる。 「これでいいの?」 「ああ、そのままで頼む」  手を胸の前で組み、腹筋に力を入れて起き上がる。目の前にある口にチュッと音を鳴らして触れた。ゆっくり戻るはずが、途中で耐えられなくて床に背中がぶつかる。  ハルは目を丸くして自分の唇を指先で触れた。 「やばっ、しんどい」 「ヒロくん、今、キスしたよね?」 「俺、全然腹筋できないかも。だからハルは俺がへばったら、キスして、って応援してよ。そしたら頑張れるから」 「僕、押さえてるだけなのに、そんなご褒美もらっていいの?」 「いや、俺へのご褒美だから。腹筋するたびにキスできるならやる気出るじゃん」 「そうかな? 僕へのご褒美だと思うけど」 「はい、じゃあ練習。俺にやる気出させるように応援して」  ハルは足首を持ち直して頷いた。 「ヒロくん、キスして。僕、キスして欲しくて待ってるよ」  顔を染めて恥じらいながらのセリフは満点だった。花丸も付けよう! 「うん、めっちゃ頑張れる」  起き上がる前にハルが身を乗り出してキスしてきた。可愛すぎて無理! 背中を床につけて顔を覆ってニヤける顔を隠す。 「ヒロくん、どうしたの?」 「今のはダメだろ。嬉しかったけど」 「そっか、待ちきれなくてごめんね。次は絶対待ってるからもう一回キスして」 「もちろん!」
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