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「陽奈、アイツはいなくなったから、今のうちに自己紹介したら?」
でっかい態度と声のいおりに、ザワザワしていた教室がシーンとする。
「武藤さんに賛成!」
「先生がいなくても続けようや!賛成!」
陽奈は小さく頷くと、自己紹介の続きを始めた。
呪い呪いと喚く桑田を保健室に預け、大急ぎで教室に戻って来た垣内先生は、生徒達が自主的に自己紹介を進めていたことに感動した。
──このクラスは最高のクラスになる予感!
垣内照27歳、教師という職業に夢と希望がギッチギチに詰まった2年目の春だった。
休み時間、いおりのまわりはクラスメイトだらけだった。謎のぱっか村について、二級河川のこと、桑田をキッと睨んだいおりの大胆さなど、あちこちから質問責めだった。
こだまからは『関西最後の秘境ぱっか村』で、押し通せと言われている。
たしりからは『超スローライフのぱっか村』で良いと言われている。
「ええっと……キャンプ地に最適な村やけど、おじいちゃん、おばあちゃんばっかりやねん、ぱっか村は」
「だから西の町に引っ越ししたんやね?」
「うん……まぁ、そんな感じ」
「ねぇ、武藤さん。いおりんって呼んでいい?」
「へっ、なんで?」
「だってアイドルみたいな顔やから」
昨夜、真似っ子の術で3年生までの勉強は習得出来ているいおりだが、学校生活はそうもいかない。ましてや、乙女心などまったくだ。
「でっかいホクロができたら、そう呼んでもええよ」
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