河童の秘薬

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「薬の会社はちょっと……武藤家代々の言い伝えで、薬関係の仕事は死んでもするな!と伝えられてます……」 「先祖代々の言い伝え?武藤家は歴史ある家系なんやな。そうか……ならばまた探しておくわな!」  杉田さんを丁寧に見送った後、たしりとこだまは頭を抱えてソファーに沈む。 「せっかくの就職チャンスやったのに、よりによって薬とはなぁ……」 「門外不出の我ら河童の秘薬。これだけは人間に知られたらアカン。それでなくともご先祖達、安易に教え過ぎたからや」  昔むかし、いたずら好きの河童達が人間に迷惑をかけた時、お詫びや友好の証しに河童の薬の作り方を伝授した。  万能薬として重宝された、まだ人間と河童が交流出来た時代は長くは続かなかった。  河童の秘薬を都で売り、一儲けしようと企んだ人間が後を絶たなかったからだ。  河童は理不尽に捕らえられ、夜通し薬を作らされた。 「河童の秘薬は門外不出とし、二度と人間には教えない、与えない事、甘い汁を吸わせない」  そのお達しが、今も続いているのだ。  武庫川の長老ムジロウの息子薬屋タロウは、そんな掟に反発して村を去った。  それもあり、ムジロウはたしりとこだまに人間界の薬屋とは関わるなと念押ししたほどだ。 「父さんと母さんも、河童の秘薬を作れるん?」  杉田さんからもらった竹輪を食べながらいおりが聞いてくる。  
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