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いぶきと出会った時は、一緒に遊んで一緒にキュウリを食べた。それだけで、もう友達だった。
ならば、陽奈はどうなんだろうか?
「あの子と約束したんや。オレが約束守ったら、あの子も守ってくれる」
何かを言いかけたこだまを制して、たしりがいおりの顔を覗き込む。
「……そうやな。ここで、初めての友達になった陽奈ちゃんを信じるんやな?」
「うん」
武藤家初めての選択は、選択外の『陽奈ちゃんを信じる』だった。
いおり自身が出した答えを、父たしりが尊重した。母こだまは不満げだが、こだまの拳は別の機会に活躍するだろう。
「いおり、一緒に寝るか?」
「うん!なんかあの布団ってやつが、気持ち悪くて寝られへんかってん……」
3匹──いや、3人は仲良く川の字で眠る。こだまがいおりの髪を優しく梳くと、瞼がだんだんと下がり、夢の中へ旅立った。
「人間を信じる……甘い男やで」
「そこに惚れたんやろ、こだまは」
「チッ。とことんあんたについて行く、惚れた弱みや……」
意外と、こだまがたしりにベタ惚れなのかもしれない。
「クッキー!!」
いおりの寝言は、あくまでも食べ物だった。
武藤家の1日が、ようやく幕を下ろす。
「キュウリ!!」
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