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いおりがまだ小さい頃、武庫川の村一番の秘薬の作り手は長老の息子タロウだった。
いつでも腕が抜ける仕様である河童達の、肩まわりに関する常備薬、皮膚薬、万能薬まで作り上げる。
薬草の知識も、特殊な薬草を育てる土壌作りの知識も、タロウにかなう河童はいなかった。
昔、河童が人間に変身するには、シダの葉っぱで頭を撫でつつ術に頼って変身していたが、タロウがシダサプリを開発してからは、無駄な力を使わなくて良くなった。
一家に一瓶シダサプリ
現代の河童達には欠かせないサプリメントになっている。しかもこのサプリメント、河童の生臭さを爽やかなシトラスの香りに変えてしまう優れモノだ。
河童の秘薬はまだまだたくさんあり、噂では不老長寿の薬があるらしいが、謎に包まれている。なんせ門外不出、一子相伝で、受け継がれたらしいタロウは家出中だからだ。
「我が家に一瓶シダサプリやからな。いおりも作れるようにならなアカン。なんせ、父さんもこだまも不器用で、いまだに1週間しか保たないシダサプリしか作れないねん……」
「あんたはまだマシやわ。私のシダサプリ、やたらゴツゴツした丸薬にしかならないねん……飲み込むのが一苦労やわ」
武藤家のシダサプリは、なかなか個性的みたいだ。
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