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「お父さんはな、きっと人間不信になって帰ってくる。役所はそんな場所やねん。ルール、ルール、ルール!めっちゃイライラするっ!」
それはこだまの性格的な問題のような気がするが、母の鬼の形相にいおりはブルルッと身震いした。
「役所だけちゃう。学校もそうや!だからな、毎朝少しづつ勉強して、なんとか誤魔化せるレベルにならなアカンで?」
「……頑張るけど、真似っ子の術を使った方がいいんちゃう?」
こだまは一瞬ポカンとしたが、みるみる顔が赤くなっていく。いおりの言った通りで、そんな術の使い方は思いつかなかったからだ。
「ま、まね、真似っ子の術に逃げたらアカン。なるべく努力して、最終手段が真似っ子の術や」
「わかった!オレ、勉強する」
こだまが準備した国語のドリルを広げ、たどたどしく読み始めた。
──子供の発想力って凄い……これから腐る程勉強しなアカンもんな……明日からは、さっそく真似っ子の術で一気に習得させよ……ハァ……。
たしりが出かけた後も、いおりはこだまに教えてもらいながら国語の勉強を続けた。
「母さん、オレ勉強嫌いじゃないかも。楽しいねん!」
「ええ子や、いおり。今日はそこら辺にして、買い物でも行くか?」
「うん!行きたい!スーパーってとこやろ?食べ物たくさんあるんやろ?」
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