初めての選択

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初めての選択

 河童人口減少に歯止めをかける為、関西の二級河川武庫川(むこがわ)をネジロにしていたいおりファミリーが人間の町に引っ越してきた。  シダの成分を濃縮させた秘伝のサプリメントで人間に化けたアウトドア感丸出しの父たしり、アスリート並みに筋肉のバランスが良い美しい母こだま。そして、つぶらな瞳が母性本能をくすぐるプリンスいおりだ。  どこから見ても人間のファミリーだ。けれども武藤家は河童なのだ。長老の強引な密命を受け、これから人間界で子孫繁栄と図太く生きるコツを学んでいく。  その引っ越し当日の夜、いおりは最大のピンチに襲われた。  隣家の娘陽奈(ひな)に、河童特有の『緑の目』を見られてしまった。  シダサプリで人間に変身出来ても、ひとつだけ注意しなければならない事がある。 ──満月の夜には、瞳の色が緑に戻ってしまう。  絶体絶命のピンチに、いおりはひたすら陽奈に懇願した。 「友だちになったら、目の事は内緒にしてくれるんやな?な?約束破ったら、尻子玉抜くからな!」  焦るいおりはもうパニックだった。尻子玉などと、河童パワーワードまで言ってしまっている。 「シリコンダマーって何?バズっているん?」  勢いよく玄関のドアが開いて、緑のパジャマを着たたしりと、顔にキュウリスライスを貼り付けたこだまが飛び出してきた。 「こ、こん、こんばんは、陽奈ちゃん!良い月夜だね!!ハッハー」 e06bc0b3-b0ab-4145-85b5-509ff0197756 イラスト 浅葱萌黄さんより
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