プロローグ

2/3
前へ
/14ページ
次へ
ーー夏の空が嫌いだった。  私には色彩感覚がない。 夏に見えるはずの緑が、赤に見えていた。 私は夏の赤に嫌悪していた。 世界で一番大切な人がいなくなったのを、思い出してしまうから。 あれは蒸し暑い日だった。 汗がジドリと伝う。 いや、汗以外にも何かあった気がする。 あぁ、そうだ。 『彼』のことを思い出してしまうから。 『彼』のことを……。 私は『それ』に酷く苦しんできた。 『彼』は私を許してはくれなかった。 酷く歪んでいく視界。 幻聴に私は悩まされていた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加