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チャイムがなるや否や、氷川は早足で訓練場を出ていく。おい待てよ、と御霊も追いかける。
倉雲は申し訳なさそうだ。横で鈴音がムスっとしている。
「氷川のことは俺から謝っておく」
「……うん」
「また明日な」
倉雲も御霊も、どっちの見方をするべきか困ってるんだろうな。私は倉雲を見送った。
「ありえないでしょ、氷川」
誰にでも優しい鈴音が怒るなんて。寮に戻る最中、ずっと鈴音は腹を立てていた。
「異能師になる気あるのかな。どうせ家に居場所がないから、寮のある高校に来たとかなんでしょ!」
「居場所?」
「あいつ、母親に男子の遊び禁止されてたんだよ。そんな話してたでしょ? だから女子嫌いなんじゃないの」
知ってる。御霊たちとの会話を盗み聞きした時に得た情報だ。鈴音も聞いてたんだ。
「あれじゃ友達いなくなるよ。辛くても人前じゃ笑顔でいるべきじゃないの? 御霊たちもよく付き合ってるよね」
「とりあえず寮戻ろうよ」
こういう時に味方がいるとホッとする。友達がいてよかった。
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