友達の異能をコピーする！ 第１部・始まり編

ベランダ突撃第２弾！

　鈴音、どうしちゃったんだろ。暴言を吐かれたら許せないのはわかる。でも鈴音もひどいことを言ってなかったっけ。

　あの程度で虐待とか言ってたんだ。これは問題発言だ。氷川の母親はどう考えても毒親だし、虐待に程度なんて尺度は持ち込んじゃいけない。

　談話室で立ち尽くしていたら、氷川が戻ってきた。

「さっきの聞いちゃったんだけど……池亀さんにだけは伝えておこうかな」

　針ヶ谷さんのことね、と。

「あの人、ゴールデンウィーク中寮にいたんだ。聞いてもないのに『親が風邪ひいて帰れなくなった』って。
　それしか情報ないけど、僕に当たりが強いのはそういうことなんじゃないかな」

　つまり氷川と同じ毒親育ち。そういえば鈴音の口から親の話を聞いたことはない。ゴールデンウィーク何してたのかも聞いてないし、サンタの話でも真顔だったっけ。

　可愛くて異能も強くて、明るい人気者。そんな鈴音が家に帰れないかもしれないなんて、考えたこともなかった。

　親友面してたくせに、何も知らなかった。想像すらしなかった。ただ恵まれた人としか思っていなかった。