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「おすすめはしない」
なんと倉雲が水を差した。藤色のロングヘアが、風になびいてバラバラになる。逆光で顔に影ができ、表情が見えない。
氷川はポカン。鈴音は目を白黒させる。
どうして急に。倉雲はずっと弱い者の味方だったはずだ。御霊のことで頑張ってたし、氷川のことでも協力してくれた。
でも考えてみれば、倉雲の言葉にはいくつもの陰があった。いつもどこか傍観者だった。
「御霊がどんな仕打ちを受けたか知ってるだろ。ちょっと身なりにかまわないだけであの仕打ちだ。
この世界で陰キャ認定されたらおしまいなんだよ」
誰も言い返せない。だってその通りだから。
「針ヶ谷は大声で笑っても許されるし、廊下を歩けば誰もがよけてくれる。
それを失う覚悟はあるのかよ。少しはみ出しただけで大騒ぎしてただろ」
倉雲はバラバラになった長髪を、指で整えた。鈴音は私をすがるような目で見る。
「レナはどう思うの? 友達いないとき、どうだった?」
「……加賀と一緒に映画行った時にね、昔クラス一緒だった男子と鉢合わせしちゃった。悪口言われたよ。それが日常だった」
「これでわかっただろ。針ヶ谷には明るい子になる才能があるんだ。俺たちと違ってな」
だからやめておけ。仮面なんか外すな。倉雲の顔に光が差し込む。目の当たりが光っている。
「……ねえ、倉雲も何かあったの?」
「ない。あったとしても池亀には関係ないだろ」
「御霊のことで声かけた時、本当は倉雲も助けて欲しかったの?」
すると倉雲はため息を。
「そんなに知りたいなら白状するよ。場所変えるか」
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