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王道に背を向けるにも才能がいる
私たちはまた自習室1へ。白い部屋がお出迎え。
氷川と一緒にここにきたとき、倉雲はただ傍観者のふりをしていた。顔色ひとつ変えずに。
「ホワイトボード出すね。池亀さん蹴飛ばさないでよ!?」
「やんないよ!」
「メスゴジラがよく言うよ。じゃ、倉雲どうぞ」
氷川に促され、倉雲は観念したように口を開いた。鈴音は恐々耳を傾けている。
「じゃあ言うよ。俺の人生はクソだ。親父に罵られて、母親は兄貴ばっかり贔屓した。わかりやすく悲劇的だろ?」
「学校もクソだ。クソ男子どもにナルシストだの調子乗ってるだの言われた。
あいつら便所にすら1人で行けないクズなのに、素晴らしい友情で結ばれてて笑えるよな」
「だから女子としか仲良くしなかった。でもネットじゃ異性としか仲良くできないヤツはクソ扱いだ」
「そのうち女子たちが俺を取り合って喧嘩して、最後はヤリチン扱いされたよ。俺は友達のつもりだったのに」
「これが主流から外れた俺の末路だ。針ヶ谷もわかっただろ」
氷川は首を振った。
「それ倉雲のせいじゃないでしょ」
「そうかもな。でも俺が普通だったらこうはなってないだろ」
氷川は顔をしかめ、鈴音は俯いている。
「俺はどうせ王道歩けないから開き直ってるけど、針ヶ谷には無理だと思う……池亀、どうしたんだ?」
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