王道に背を向けるにも才能がいる

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 閑話休題。 「ねえ倉雲、前に記憶の上書き保存の話してたでしょ」  ノイズ先生が氷川に伝授した、女子嫌いを治す方法。倉雲はあの時傍観者として参加していた。 「あの時、今は楽しいって言ってたけど」  すると倉雲は壁にもたれたまま、ずるずると床に落ちる。 「そりゃ楽しいさ。友達もできたし、嫌なヤツもいないし、リスク抱えて女子とつるむ必要もない。  地獄から生還したから、針ヶ谷には王道の外(地獄)に行かないで欲しいだけだ」  まあ俺のエゴかもしれないけどな。針ヶ谷は好きにしてくれ。倉雲はそのまま膝に顔を埋めた。藤色の髪がサラサラと落ちる。  鈴音の顔が暗くなる。 「……やっぱりあたしには無理。王道に背を向ける才能なんてないもん。みんなと違って強くないから」  氷川は困った顔で私を見ている。そんな顔されても私だってわかんないよ。こんな時ノイズ先生だったら……。
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