イケメンと出かけることになりました! どうする!

5/6
前へ
/254ページ
次へ
 イケメンと映画だなんてイレギュラーやらかしたせいか、神様は再びミスってしまったらしい。池亀レナの人生に落とし物をした。  地元に捨ててきたはずの過去を。 「うわ、あれ池亀だろ」  耳障りな声が、映画館の喧騒をくぐり抜けて刺さる。振り向くと高校生カップルが。  彼氏の方がニヤニヤ笑っている。忘れるはずがない、中3の時に同じクラスだった男子だ。  名前は水沢。当時はクラスの人気者だった。似合わない髪型に流行の服が痛々しい。 「は? え? 誰?」  彼女さんは突然始まった悪口に困惑している。しかし空気の読めない元クラスメイト水沢は、面白いと思ったのか続けてしまった。 「中学一緒だったキモいやつ。ぼっち映画とかキモすぎ」  隣の加賀には気づいてない様子。わざわざ東京デートで人の悪口言うことないでしょ、と思っていたら横からツンツンされた。 「おい池亀、なんだあいつ」  加賀も顔をしかめていた。私は呆れてささやいた。 「同じ中学だった水沢ってヤツ。ほっといていいよ」  不思議と嫌な気持ちはしなかった。だって今は加賀と一緒だから。ここにはいないけど鈴音や穂村という友達もいる。先生というメンターもいる。    何も怖くない。下がるのはクソ野郎の株だけ。こりゃ彼女にフラれるな。  去年同じクラスにいた時は怖く見えた。でも今見るとちっとも驚異に感じない。虫籠(フィールド)を抜け出したからだ。  私は前を向いて列が縮まるのを待った。国木田に早く会いたいなあ♪    でも加賀は違った。 「おい、そこのクソゴミ野郎。さっきからうるせーよ」
/254ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加