第5話 目が合う

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第5話 目が合う

 スタジオの練習終わり、僕とチャトとカイとユヅルで帰っている。チャトとカイが、前を歩いて話している。 「チャト、お前また痩せたんじゃないか?」 「うるせー、減量してるんだよ」 「試合でもするのかよ?」  カイはチャトと同じ学部の、明るい青年だった。明るくて、だからこそ無邪気に冷淡な発言をすることがあった。チャトはカイと仲が良かった。友人、いるじゃないか。チャトは、カイと特別仲が良いわけではないと言っていたが、自然に付き合える友人のように、僕には見えた。僕が察するところ、カイは瞳が大きく端正な顔立ちをしていると思う。二人の間にそういったことがあったかは、僕の知る由もない。隣のユヅルを見ると、眠そうに瞼を擦っている。ユヅルは大人しい。 「ユヅルもちゃんと食えよ」  カイが後ろに下がってきて、ユヅルの肩を組む。そして、カイは僕の方に目を合わせて。 「ただの友人だよ」  と、言った。察しが良い男だ。
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