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 そんなある日、銅線を束ねて持ち上げようとしたとき、腰に激痛が疾った。痺れるような痛みが背骨から首、腰から左足を貫き、その場から一歩も動けなくなった。現場の車で病院に連れて行ってもらいレントゲンやMRIの精密検査をした結果、腰のヘルニアだと診断された。もう肉体労働は出来ない。目の前が真っ暗になった。しばらくは安静に過ごすしかなく、妻のパートの収入だけで爪に火を点す生活を送っていたある日、飯場の同僚富重(とみしげ)がアパートを訪ねて来た。この時はすでに自宅も競売にかけられ、古いアパートに居を移していた。
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