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プロローグ
アフォガートはイタリアのデザート、甘さ控えめのバニラアイスクリームに香り高いアッサムティーが注がれた。
「イタリアでは溺れるという意味だそうですよ」
辻崎 宗介(38歳)は辻崎株式会社の副社長だ。14:00になると自社ビル2階のchez tsujisakiに現れアフォガートをオーダーする。
「そうなんですね」
ガラスの器をテーブルに置いたパティシエールの名前は木古内 果林(25歳)、彼女は宗介が副社長である事を知らない。
「果林!次の客!」
「はい、申し訳ございません、失礼します」
パティシエ木古内 和寿(30歳)は果林の夫。
「果林さんは本当に鈍いわ」
「使えない女だよな」
菓子工房の中でほくそ笑む女性は同僚の杉野 恵美(30歳)、和寿と恵美は愛人関係にあった。
「あら、果林さんいらしたの?」
「お義母さん」
和寿の母親の木古内 菊代(60歳)は息子と従業員が愛人関係にあるなど気付く事なく、日々果林に陰湿な態度を取っていた。
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