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「ーーーさて、と」
宗介はおもむろに立ち上がるとシーリングライトのリモコンを掴んだ。
「あかりセレクト、図書館だな」
「図書館の明かり、程よく明るいですね」
「これなら細部までバッチリだ、さぁボールペンはどのメーカーが好きですか?」
「んーーーー」
色は黒、5本のボールペンを握っていた。
(やる事がいちいち細かいというか、こまめだな)
果林は水性ゲルインクボールペンを選んでそれを手に握った。その姿を見た宗介は最上級の笑顔で喜んだ。果林はシャープペンシルで書き込んだ下書きをボールペンで丁寧になぞり2人はインクが乾くのを待った。
「まだかな」
「まだじゃないですか?」
宗介はティッシュペーパーを手に持つと余分なインクを吸い取りフゥフゥと息を吹き掛けた。それでも滲んでは大変だと消しゴムを掛け印鑑を捺すのは明日に持ち越す事になった。
(さすが副社長、慎重だな)
そこで宗介はシーリングライトの明かりを消して果林を凝視した。
「如何しましたか?」
ゆっくりと顔が近付き唇を3回啄んだ。
「あと1時間半で私の誕生日なんです」
「ーーーはい」
「誕生日を祝って下さい」
「歌でも唄えば良いんでしょうか?」
宗介はもう一度唇を重ねた。
「私の身体の下で」
「身体の下で?」
「啼いてみませんか?」
「ーーーえっ」
宗介は開け放った扉を指差した。
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