1-3 4月18日の彼と彼女の日常

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「飾り気がなく無邪気で明るいぃ? うへー、スイと合わなそう! つーか、彼女ちゃんはなんでお前を好きになったん?」 「穂は黙ってりゃ、クールで強面なイケメンだ。顔がタイプだったんじゃねぇの?」  俺は相当キツい顔立ちをしてるが、千春から見ると『宇宙一カッコいい』らしい。こういう顔がタイプなのか? 話したことねぇからわかんねぇな。 「それは知らねぇけど、とりあえず俺のことは大好きっぽい」  眞壁は表現し難い顔で黙りこむ。俺は教卓をチラッと確認するが、教授はまだ来ていない。そのとき、幹彦が急に声を小さくして言った。 「で? ヤったの?」 「ヤってねぇよ。彼女の親に、お互いの家に入んの禁止されてる」  俺も声を低くして答えると、竜も眞壁も小声で話に入ってくる。 「空くんはちゃんとそれを守ってんだ。偉いじゃーん」 「なぁ穂、そもそも彼女ちゃんいくつよ?」 「もうすぐ17」 「……下手に手ぇ出したら逮捕されんな。気をつけろよ?」 「えっ、逮捕? スイ逮捕されんの!?」 「幹彦、うるせぇ。別に彼女の両親に禁止されなくたって、手ぇ出すつもりはなかった。ちゃんと大切にしてぇから」  とたんに、三人は顔を見合わせた。全員、変な表情をしている。 「穂、彼女ちゃんのこと、『好き』なのか?」  眞壁がなにを聞きたいのか、わかってる。こいつらは、俺の感情が鈍いことを知っている。 「まだわかんねぇ。でも、俺は彼女を大切にしたいし、『好き』になりたい。おかしいか?」 「おかしくはねぇんけど……」  眞壁たちはまた顔を見合わせて、それから俺を見て、くしゃみをこらえてるみたいな顔をした。 「なんだよ」 「スイって、こういうときむずむずしない?」 「花粉か?」 「違くて……あー、うん、いいや。へへ、合コンなんて誘っちまって悪かったな」  『へへ』じゃねぇんだよ幹彦。なんで今度はちょっとすっきりした顔してんだ。 「穂って惚気るときも無表情なんだなぁ。いやぁ、動画撮っときゃよかった」 「だね。脅しに使えたかも」  眞壁と竜もいい笑顔だ……つーか、惚気? 今の惚気か? と、そのタイミングでチャイムが鳴った。俺、眞壁、竜は即座に口を閉じるが、幹彦はバカなのでデカい声で宣言する。 「スイの話で勇気を貰えたな! オレも、合コン頑張るぜ!」  静まり始めた教室に、幹彦の声はよく響いた。  ちょうど入室した教授の耳にも届いたのか、教授は悲しそうに首を振る。 「柏幹彦」 「あ、はい!!」 「なにを頑張るのかね?」 「ああっと、そう、っすね……勉強、勉強です!」 「そうか。ならば、課題のレポートはやってきたな?」 「課題っすか?」  幹彦が俺を見る。教授も俺を見る。  俺も「課題?」と首を傾げながら、眞壁と竜を見る。  二人ともドヤ顔で、文字で埋まったレポート用紙を見せつけてきやがる。教授のため息が聞こえた。 「柏、空峰、他にも課題を忘れた者がいたら、今日の5時までに必ず、研究室に提出しにきなさい。それでは、講義を始めるぞ」  俺と幹彦は頭も要領もいい二人を睨むが、二人は涼しい顔だ。レポートあんなら教えろよ。  こんな俺を見たら、さすがの千春も『穂さん素敵!』とはならねぇだろうな。そんなことを思いながら、俺は教授の声に耳を傾けるのだった。 ★穂さんの場合【おわり】、次ページから千春の場合
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