1-3 4月18日の彼と彼女の日常

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★千春の場合  4月も下旬に差し掛かり、新しいクラスやコースにもだいぶ慣れました。  2年生になると、文理でコースが分かれるので教室移動が増えます。  今日の3限目は、選択科目の生物。少し遠い教室に向かってほぼダッシュの早歩きをしていた足が、とある教室の前でピタリと止まります。 「つまり、すいさんかぶつイオンが」    (すい)さん!?  恋しい人の名が、突如、教室から聞こえてきました! あら、授業がちょっと長引いてる。先生が早口で、イオンがどうちゃら話してますね。 「ハル! どうしたの、忘れ物?」  一緒に早歩きしていたマリちゃんが、急に立ち止まった私にびっくりしています。私は慌ててぶんぶん首を振りました。 「ううん、違うの。ちょっと空耳が最高で……はっ、『空耳』と『空峰(そらみね)』ってニアピンだ! これはビックバン的大発見!」 「よくわからんけど、行くよ」    マリちゃんは一年のときから同じクラスだから、私の言動には慣れっこ。平然としているマリちゃんと一緒に、早歩きダッシュを再開します。 「ごめんね。いいこと思いついちゃって」 「ハル、笑顔が怖い」  慌ててぐっと頬を引き締めますが、あまりに『いいこと』だったので、ウキウキしてきました。ああ、早く昼休みにならないかなぁ!
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