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今日はちょうど、穂さんが塾のお迎えに来てくれる日です。いつものコンビニで待ち合わせて、一緒に私の家へと歩き出します。
それにしても、穂さんって異様に夜のコンビニが似合うなぁ、深夜の渋谷とか新宿歌舞伎町も似合いそう。
「――マーカー大作戦か」
私の話を聞き終えた穂さんは、あまり考える様子もなく、こっくり首を縦に振ります。
「千春が授業を楽しめるなら、いいんじゃねぇか?」
「いいんですか!?」
つい大きな声が出てしまいました。もう住宅街なので静かにしましょうね、私。
「ウザくないですか、気持ち悪くないですか、ストーカーっぽくないですか?」
「ない」
ないらしいです、良かった! 穂さんは変な嘘は吐かないので、安心。ほっと胸を撫でおろす私に、穂さんは続けます。
「でも、テストに関係ない単語もマーカーしてるんだろ? 千春が変に思われないか?」
なんと、私の心配を!? 優しいなぁ……私は声量を抑えつつもきっぱり答えます。
「大丈夫ですよ、私はずっと前から変人だと思われています!」
穂さんが眉をひそめます。どう見ても『心配』の表情です。
「嫌なことあったら言えよ」
嫌なことなんて全然ないのですが……穂さんが頭を撫でてくれるのが嬉しくて、言語能力を失い、頷くだけになってしまいました。穂さんに触れられると、体の芯からぽかぽかしますねぇ。
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