1-3 4月18日の彼と彼女の日常

6/7

10人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
 今日はちょうど、穂さんが塾のお迎えに来てくれる日です。いつものコンビニで待ち合わせて、一緒に私の家へと歩き出します。  それにしても、穂さんって異様に夜のコンビニが似合うなぁ、深夜の渋谷とか新宿歌舞伎町も似合いそう。 「――マーカー大作戦か」  私の話を聞き終えた穂さんは、あまり考える様子もなく、こっくり首を縦に振ります。 「千春が授業を楽しめるなら、いいんじゃねぇか?」 「いいんですか!?」  つい大きな声が出てしまいました。もう住宅街なので静かにしましょうね、私。 「ウザくないですか、気持ち悪くないですか、ストーカーっぽくないですか?」 「ない」  ないらしいです、良かった! 穂さんは変な嘘は吐かないので、安心。ほっと胸を撫でおろす私に、穂さんは続けます。 「でも、テストに関係ない単語もマーカーしてるんだろ? 千春が変に思われないか?」  なんと、私の心配を!? 優しいなぁ……私は声量を抑えつつもきっぱり答えます。 「大丈夫ですよ、私はずっと前から変人だと思われています!」  穂さんが眉をひそめます。どう見ても『心配』の表情です。 「嫌なことあったら言えよ」  嫌なことなんて全然ないのですが……穂さんが頭を撫でてくれるのが嬉しくて、言語能力を失い、頷くだけになってしまいました。穂さんに触れられると、体の芯からぽかぽかしますねぇ。    
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加