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翌日、マリちゃんに穂さんとの会話を伝えます。マリちゃんにも、心配かけたからね。だけど、彼女は私の話を聞き終わっても、難しい顔のまま。
「ねえハル。『穂さん』って、実在してる?」
なぜ実在を疑われて……? はっ、そうか、穂さんの対応が完璧すぎたから!? 私の行動を快く受け入れ、あまつさえ学校生活を心配してくれるなんて、完璧の極みですものね! 乙女ゲームの登場人物だったんですか、穂さん!?
「年下彼女に甘々の、顔の良い元ヤン……そんなのフィクションじゃん?」
今度は物理の難問にぶち当たったときの顔で、マリちゃんがブツブツ呟いています。写真を見せれば、マリちゃんの悩みは解決しますが――『フィクションだと疑われる穂さん』って面白いので、しばらくこのままにしておきましょうか。
『穂さん穂さん、カッコ良すぎて実在が疑われてますよ!』って言ったら、彼はどんな顔をするのかな。なんて考えながら、私は春の空のように青いマーカーで、教科書を染めていくのでした。
★千春の場合【おわり】
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