1-4 4月28日、ふたり、はじめての誕生日

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「いつも私を大切にしてくれる穂さんを、私だって大切にしたいんです。言えることはなんでも言ってください」 「ああ」  素直にこっくり、頷く穂さん。はぁ、クリームソーダを飲む穂さん、一生見ていられる……でも、わざわざバイト前に私を呼び出したのはなんでかな? 「そういえば珍しいですね、バイト前に会おうなんて」  穂さんは居酒屋のキッチンでバイトをしています。応援に行けないのが残念。バイト中の穂さんも絶対、とっても素敵なのに。 「ちょっと先だけど、プレゼント、渡しとこうと思って」 「……へ?」  まさか? まさかまさかまさか!?  驚愕する私の前で、穂さんは大きめのトートバッグから紙袋を取り出しました。有名なコスメブランドのロゴが入った、愛らしい薄桃色の紙袋です。 「誕生日おめでとう。30日に、またメッセ送るな」  差し出された紙袋を、受け取る手が震えます。穂さんは小さな笑みを唇に浮かべて、私の反応を見ています。見ていて、くれています。 「……あ、あの、覚えていて、くれたんですか?」 「千春も俺の誕生日覚えてるだろ?」 「そりゃあ、覚えてますけど……っ!」  だって、一回しか言ってない!  4月30日が誕生日だなんて、私、あなたと出逢った日に伝えたきりなのに! 『空峰(そらみね)穂さん。いいお名前ですね! 秋生まれですか?』 『そう。10月15日』 『つい最近ですね、おめでとうございます!』 『どーも。木島(こじま)は春生まれ?』 『はい、4月30日です』  あの、一回。たった一回。  私が、あなたの誕生日を覚えているのはわかる。  あなたに恋をした、私だから。  あなたに関わる全部が宝物になった、私だから。 「……うっ、す、穂さぁーん」  でも、あなたは違うはずなのに。  どうして、私の誕生日を、ずっと忘れないでいてくれたの? 「泣くな」 「泣いてません!」  ギリッギリで耐えました、危ない危ない。
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