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「ありがとうございます、とっても嬉しい!!」
紙袋を抱きしめました。このまま踊りだしたいくらい嬉しいですが、お店に迷惑なので耐えましょうね。代わりに穂さんに問いかけます。
「このブランド、女性客ばっかりだったでしょ? 入るの恥ずかしくなかったです?」
「いや」
さすが穂さん。マジでなんも思わなかったのでしょう。
「どんな顔して入ったんです?」
「この顔だな」
自分の整ったお顔を指さす穂さんに、私はきゃーっカッコいい! と黄色い歓声をあげました。
穂さんはクリームソーダのアイスをすくいながら――そんな姿にも私の心臓はわーきゃー叫んでいるのですが――じたじたする私を観察しています。私が笑いかけると小さく笑ってくれます。
あーもう、好き。
好きで好きでどうしてくれよう! どうにもならないなぁ!!
「今日、家で永遠に穂さんの話しちゃいそう」
「場が凍らないか?」
「凍ったら溶かします!」
それからは、私、ずーっと笑ってました。真面目な顔なんてできなかったのです、頬が勝手にとろけてしまうのです。そして、何度も何度も、すぐ横に置いた紙袋を撫でちゃいました。
お店を出て、バイトまで余裕があるからと、穂さんが私を家まで送ってくれます。日の光がほんのり残った空の下、私と穂さんは手を繋いで歩きます。
「穂さん、お誕生日に欲しいもの、考えておいてくださいね」
「まだ先だろ」
「先だからこそ、です! ものすごく高価なもの以外は、なんでも用意しますから」
「考えておく……半年後か、忘れそうだな」
「ご自分の誕生日なんだから忘れないで!」
なんて話をしていたら、あっという間に家に着いちゃった。穂さんと一緒だと、我が家の立地の良さを恨んでしまいます。もっと駅から遠ければ、その分だけ長くお話できたのに。
「穂さん、ありがとうございました」
家の前で、改めて頭を下げます。家から漂うカレーの匂いにお腹が鳴りそうですが、ぐっとこらえて、穂さんに真面目に告げます。
「プレゼントを開けたら、また変なテンションのメッセージを送りますので、お覚悟を」
「わかった」
「じゃあバイト、頑張ってくださいね」
「ああ」
そして穂さんはクールに去る……と思ったら、くるっとこちらを振り向いて戻ってきました。
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