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4月 小話『ヒポポたまちゃん文明』ほか
☆小話その1『ヒポポたまちゃん文明』
さて、なにを作ろうかな、と考えます。
そろそろ次の制作の構想を練り練りしなくては。美術部員は、夏のコンクールへの出展が義務付けられています。去年は、セミを作るぞって決めてたけど、今年は……うーん。
こういうときは、やっぱり、無意識の底から作品の題材を探しましょう。
思いついたその日から、私は寝言が録音できるアプリを起動して眠ることにしました。
最初の2日は寝息とくしゃみしか入っていなかったけど、運命の3日目。
『……ぽぽ……たまちゃんぶんめい』
「こ、これだー!!」
これが、私の自我の底の超自我的なアレなのでしょうか!?
でも、不鮮明な録音から己の超自我的なアレを規定してしまうのは、危険だものね。
そこで私は、寝言部分だけを編集で切り出し、友達に聞いてもらうことにします。
「ねえねえ、これ私の寝言なんだけど、なんて聞こえる!?」
まずは同じクラスのマリちゃんたちに録音を聞いてもらいます。
「んー……『ポポポたまちゃん文明』?」
「やっぱ『たまちゃん文明』は『たまちゃん文明』だよね?」
「これは完全に『たまちゃん文明』だわ」
「え、私は『ポポンたまちゃん文明』に聞こえた」
「あたしは『ウポン』に聞こえたけどなぁ。『たまちゃん文明』はオッケーだけど」
どうやら『たまちゃん文明』は間違いないということがわかりました。
けれど、最初の部分は意見が割れてしまいました。他の子たちにも、声をかけてみます。
集計すると、マリちゃんが提唱する『ポポポ派』が一番多かったのですが、『ポッポ派』もかなり多く、他にも『ポポン派』『ポポー派』『ウポー派』などが乱立。これは更なる調査が必要だね。
昼休みを費やして、美術部の友達や別のクラスの友達の意見を求めてみます……少し時間はかかってしまいましたが、無事に!
これが一番妥当ではないか、という言葉が見つかりました!
「ヒポポたまちゃん文明!!」
教室に戻ってまず、マリちゃんに宣言します。彼女はいつだって冷静です。
「カバなの?」
「カバだね!」
「でも『たまちゃん』ってアザラシ、昔いなかったっけ?」
「いたいた、つまり『ヒポポたまちゃん』はカバとアザラシのハイブリッドだね!」
次の数学の授業中、私はこっそりとクロッキー帳にヒポポたまちゃんを描きます。
ヒポポたまちゃん。
頭と脚はカバで、胴体はアザラシ。
顔をしっかりデフォルメしたら、あら可愛い!
クロッキー帳をマリちゃんたちに見せてみると、ヒポポたまちゃんのデザインは概ね好評でした!
「意外と可愛い……ちょっと妖怪っぽいけど」
「ぬいぐるみあったら売れそう! 一部の界隈で」
うんうん、ヒポポたまちゃんのデザインはこれでいきましょうか。
でももう少し、インパクトが欲しい……ヒポポたまちゃんたちが文明を築くための、ビックバン的な……あ、そうだ!
こんなときこそ、大好きな『彼』からも意見を聞いてみようっと!
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