4月 小話『ヒポポたまちゃん文明』ほか

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☆小話その4『ふたりの、誕生日当日』 「千春、もう寝たほうがいいんじゃないか? 無理して起きてなくても」 「無理してないし」  あと30分で、4月30日。  私は晴れて17歳となります。  世界で一番恋しい彼氏、穂さんは本日、バイト中。彼のバイト先は居酒屋なので、閉店時間は24時です。ただ、今日は少し早めに上がれるらしく……『千春さえ大丈夫なら通話するか?』とお誘いいただきました!   だから、起きているのです。起きていなければならないのです! 「いや眠そうだぞ? こんな深夜に電話させようなんて、」 「私が! 穂さんとお電話したいの!」  リビングに降りたのが間違いだった……父さんと母さんはもう寝てるからいいのですが、問題は兄さんです。普段は滅多に飲まないハーブティーをわざわざ用意してまで私に干渉してくるの、ホントにウザい。 「明日は休みだし、夜更かししたっていいでしょ。もう高校生なんだから」 「まだ高校生だろ。明日の朝話すんじゃダメなの?」 「日付が変わった瞬間に話すほうが、特別な感じするじゃん!」 「錯覚じゃない?」 「じゃない!」  兄さんと、結婚して家を出ている姉さんは、両親よりも強硬な、穂さんアンチです。  私はまだブツブツ言っている兄さんを放って、自室へ引き上げました。はぁ、シスコンのことは忘れようっと。自室でマンガを読んでいると、しばらくしてピコン、と通知の音がしました。 『話せるけど、どう?』  穂さんだぁ! 私は高速でお返事を入力します。 『大丈夫です』 『通話つなぎますね』 『ビデオ通話でいいですか?』  『ああ』という返信がきたら、電話マークをタップして、コール音が1回、2回。 「穂さん、こんばんは!」 「こんばんは」  四角く切り取られた画面で、穂さんが礼儀正しく頭を下げます。 「バイト、お疲れ様です。眠くないですか?」 「ああ。まだ寝る時間じゃねぇから。千春こそ、大丈夫か?」 「大丈夫ですよ、元気いっぱい!」  両手で大きく手を振りました。穂さんはお上品に片手を軽く振り返してくれました。なんだか可愛い仕草です。 「ご両親は? なんか言われなかった?」 「父さんと母さんは平気です。兄さんが絡んできましたが、問題ナシ」 「まあ、お兄さんも心配なんだろ」  穂さんは、いつも通りのスーパークールイケメンフェイス。兄さんよりも年下の彼は、落ち着き払っています。もっと兄さんにイラついてもいいんだけどなぁ。 「通話するだけなのに、なにが心配なんでしょう?」 「変な奴もいるからな」 「でも、穂さんは変じゃないです。見た目がチャラくて、元ヤンなだけです」 「そこが心配なんじゃねぇの」 「だからって……うぅーん、とりあえず、兄さんの話はいいです。穂さんの話をしたいです!」  私はパン、と手を叩いてシスコンの話を切り上げます。穂さんは少し首を傾げました。  
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