3-4 6月24日は、魔法の日

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3-4 6月24日は、魔法の日

☆『これはどこまでも強く美しい魔法』  本日は我が平藤南(ひらふじみなみ)高校の体育祭っ!  今年、私が参加する競技は玉入れとリレー、そして創作ダンス!  創作ダンスは全員参加の競技で、体育祭の目玉競技でもあります。  体育祭のチームは学年縦割り――私は二年七組なので、三年七組の先輩たち、一年七組の後輩たちと同じチームです。  創作ダンスは総勢百名以上でお手製の衣装を着て踊りますから、迫力満点! この日のために、どのチームも練習を積み重ねてきました。  今日は雲がほとんどない、素晴らしい晴天です。練習の成果をしっかり発揮したダンス終了後、教室に帰ったとたん、みんなは「暑い!」「疲れた!」と叫びます。 「あー暑かったね!!」  私もでっかく叫び、水筒からごくごくと麦茶を飲みます。水分補給は大切、油断したら倒れちゃうもの。 「ほんと暑かった……ほらハル、塩タブレット」 「マリちゃんありがとー」  机や椅子を後ろに下げて、広くなった教室の床に、私たちはだらしなく座り込みました。  今はお昼後の最後の休憩時間です。この長めの休憩が終わったら、次の競技が始まります。  飲み物を買い足したり、遊びに来ている家族や他校のお友達に会いに行ったり、バタバタしているクラスメイトも多く、教室は落ち着かない雰囲気です。 「マリとハルはリレー? 結構休めてよかったじゃん」 「うん。あたしはしばらく教室にいるわ。ハルは?」 「私も、マリちゃんといるつもりだけど」  と言いつつ立ち上がる私。マリちゃんたちは、疲れた顔で私を見上げました。  私も疲れていますが、大事な用事があります。この用事さえこなせば、疲れなんて宇宙の彼方にぶっ飛ぶでしょう。 「ちょいと野暮用……ううん、スペシャルな用事を済ませてくるね」 「これからスペシャルな用事済ませんの、しんどくない?」 「大丈夫、幸せな用事だから」  スマホだけ持って、教室を出ます。マリちゃん、いつもよりツッコミにキレがないなぁ、お疲れマリちゃんだね。なんて思う私も足は重いし、日焼けしちゃったのか、顔や腕が火照ってしんどいです。  でも、(すい)さんと会えるから大丈夫だもんね!   下駄箱でスマホを見て、穂さんからのメッセを確認します。 『所定の場所に着いた』  スパイみたいなメッセですね、ワクワクしちゃいます。返信した後、あたりを警戒しつつ、外に出ました。  今日のために、私は美術部の先輩から、体育祭のベスト逢引き場所を聞いています。  合流場所は正門がベスト。裏門を出てすぐに、コンビニや有料駐車場があるので、正門のほうが人が少なくて合流しやすいのです。  よって私たちの合流場所は正門近く、緑の葉がしげった桜の木の下!  もちろん正門だって混んでいます。だけどあの長身、夜の渋谷が似合いそうなお洋服……私が彼を見間違えるはずありません!  「穂さーん!!」 「千春、お疲れ」 「ありがとうございます! ……ところで、初めて見ました、お帽子スタイル穂さん」  バケハ穂さん、降臨……!  バケットハットも似合っちゃう、天才過ぎません?  「これは髪もピアスも隠せて、通報される可能性が減る優れものだ」 「まさかの変装目的ですか……!?」  いつも通りでも、通報されないのに、穂さんったら心配性!  体育祭だから、本日限定で髪がハデハデの平藤生も多いのにね。  でも、穂さんほどのイケメンオーラを纏ったイケメンはそうそう存在しません。JKにもDKにも刺激が強すぎるから、そろそろ場所を移動しないと。
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