1-2 4月15日のデートではぜる

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 しかし席に案内されたら、ニヤついてもいられません。まもなく闘いが始まるのです。まずは注文だけどね、お腹空いたし。 「パスタにしよっかなー、お肉もいいなぁ。穂さんなににします?」 「ハンバーグと米」 「付け合わせ、パンじゃなくてやっぱりお米です?」 「ああ」  穂さんの好きな食べ物は『白米』です。力強く首を縦に振る穂さん、可愛い。よし、私もハンバーグにしよっと!  注文を終えたら、いよいよ闘いの始まり。私はスマホでストップウォッチを準備します。穂さんが向かい側で首を傾げました。 「時間を計んの?」 「ええ。後ほど、研究ノートに書き込まなければなりませんから」 「なるほど。じゃあ、俺が時間を測る」 「ありがとうございます! では、早速カウントをお願いします」 「ああ。……3、2、1」  間違い探し開始!!    ふむ。今月の間違い探しは、お花見を楽しむ人たちのイラストだね。 登場人物は、先月のひな祭りより多いかな……ちびっこの人数! ちょうちょの羽の柄、重箱の中身に……ふふん、半分までは余裕だね。 「穂さんはいくつ見つけましたー?」 「3つ」  なんて会話の間にも間違いを次々と発見です……桜の木のボリューム感は難易度高くない!? えっと、それから最後………………どこ? 「穂さんおいくつー?」 「6つ」  …………あ、わかった。ちびっこのシャツの裾の長さだ。私が「勝ちました!」と手を上げると、穂さんがスマホをタップします。 「5分32秒」 「やっぱり5分越えちゃう……」  5分以内に全ての間違いを見つけられたことなんて、一度もありません。来月の私に期待! 「でも相当早くないか? 俺なんて6つのまま止まってるぞ」  穂さんが少し眉を寄せたところで、ちょうど料理が届いたので、穂さんのチャレンジを中断して、まずはお腹を満たします。  食べ終わってから、またチャレンジしたものの、穂さんは最後の1つを見つけられずに無念のギブアップ。答え合わせしてお店を出ると、彼は笑みを浮かべて私を見下ろします。 「千春の本気が見れて楽しかった。来月は、俺も全部見つけてぇな」  来月の約束らしき言葉をくれる彼に、とくんと心臓が跳ねます。  間違い探しなんて子供っぽいと呆れられていないか、ちょっぴり不安でしたが杞憂でした。  画材屋さんに向かう足取りも軽いです。穂さんは私が美術部に所属していると知っているので、製作の進捗も気にかけてくれるし。 「『ヒポポたまちゃん文明』は元気か?」 「はい、元気かつ順調に文明を築いています! 夕飯のときに、写真をお見せしますね」  話しているうちに、画材に強い文具店『世界館』が見えてきました。都内にも店舗があるお店ですが……沢塚店はいつきてもお客さんがいません。駅から離れているせいでしょうか。  今日も土曜日なのに、お客さんは私たちだけ!  たくさんの絵具や色鉛筆、バラ売りの紙を、じっと見ていた穂さんも、心配になってきたみたいです。 「画材屋って、いつもこんなに静かなのか?」 「うぅん、小さなお店なら、まあ……? でも、ここはちょっとだけ経営が不安なので、絵具と紙を買い足します」 「……俺も、なんか買っとくか」  穂さんは「寝れないときに良さそう」と、大人向け塗り絵と色鉛筆のセットを買っていました。  お家で黙々と塗り絵をする穂さんってゆるキャラみたいで可愛い……けど、私たちが買い物を終えるまで他のお客さんの姿は見えず、やっぱり経営状況が心配です。
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