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「あのね、明斗くん化粧をしたいの」
「……」
「彩乃ー、ほっといていいって」
クラスの女子やら、男子やらが口々に言っているがそんなことお構いなしだ。
「…嫌」
マスク越しから聴こえるその声はとても優しく、歌ったらとても良い声質なのではないかと思えたので詰め寄る。
「じゃぁさっ!明斗くん、もしよかったら一緒にバンド組まない?ちょうど、ヴォーカルがいなかったから。よかったらなんだけど…!!」
彩乃が組むバンド、Bright・moon(ブライト・ムーン)は、デビュー寸前でヴォーカルが女性問題でトラブルを起こし呆気なく散ったのだと思われていた。
ところが、事務所とレコード会社からヴォーカルを変えれるのならば、デビューを考えてくれるらしいのだ。
「…歌うのはちょっと…、君がヴォーカルならやってもいい。」
ずっとマスクをしている明斗くんは、意外にも無口ではないみたいだ。
「待って!!私、ピアノとキーボードだよ。ヴォーカルなんて、できるわけないよ。」
「…じゃあ、やらないし、化粧の話しもナシだ。今日、早退するから帰る。」
明斗くんは、今日も早退するという。一週間にニ、三日は用事で早退しているらしい。
「ちょっと、待って明斗くん―――。」
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