宿命

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宿命

 医師を呼んだがもうできることはないと首を横に振られた。  母はそののち目覚めることなく、志延が見守る中静かに息を引き取った。  母の葬儀が終わるのを待っていたかのように、兄が覚醒した。  医師に奇跡と言われた。  しかし目が覚めたとはいえ、これからリハビリをし社会に順応するまで、道程(みちのり)は長い。  エンメさんは志延の夢に出て来るようになった。  夢の中で不気味に笑うエンメさんは志延に問いかける。 「これからはお前を守ってやろうか」と……。 「いいえ。自分の身も、この家も、私が守る」  志延は強く誓うのだった。 <了>
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