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「これが、百年前に起きた怪現象であり事件、“ないものさがし”です」
私はパタン、と教本を閉じた。生徒たちは真剣にノートを取っている。勉強熱心な子供達だ。いずれ、私達の後を継ぐ立派な大人になってくれることだろう。
「一人の指導者が言った言葉をみんなが鵜呑みにして、その結果争い、死ななくてもいい人がたくさん死にました。洗脳とは恐ろしいものです。自分で知識を得て、自分で考え、自分で行動し、善悪を冷静に判断する。その力があれば、このような悲劇は起こらなかったことでしょう」
子供達のキラキラした目を見回して、私は告げる。
「皆さんはどうか、このような愚かな人々になってはいけません。恐ろしい歴史は繰り返してはいけないのです。誰かの言葉に盲目的に従ったり、誰かが世界を良くしてくれるなどと頼り切り、己で未来を変えようとしなかった者達の末路がこれなのです。皆さんはちゃんと自分達の心で考え、いつでも正しい選択ができるよう心がけましょうね」
「はい!」
子供達は声を揃えて、笑顔で頷いた。
「わかりました、教祖様!」
よろしい。
私は彼等の姿に、仮面の下で嘲笑してみせたのだった。
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