グレーとターコイズ

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「あー、アサギ。聞こえる?」 『ああ。聞こえる』 中立国への国境付近、小さな箱に話しかける奇妙な青年がいた。 のどかな草原に一本道。他には誰もいない。しかし青年は箱に向かって楽しそうに話す。 「上手くいったよ」 『な。聞いててハラハラしたけど。ほんと、上手くいってよかったよ』 「そうだね。……あー、これで宿無し元手なしの一文無しかぁー!」 『……ジェリー、』 「清々するね!」 『……はは、そうだな』 「そうだよ。もっと喜ばないと。十何年来の政府とのしがらみから解放されてさ。よかったよほんと。早く家みつけないとね」 『そうだなぁ。俺のボディーも無いと俺も仕事できねぇから戦力にならないし……サクラに至っては今USBの中だもんな』 「うん。アサギがこのサクラの家から出ていくまではサクラは眠ってて貰うことになるね」 『そっかー……半年くらいかかるかな』 「そうだね。最短ルートだけどねそれ。もう今は材料費出してくれる人たちもいないからさ、そこから稼がないと。……材料費稼いで、ラボ持って、制作して……あれ、これ2年くらいかかるんじゃない?」 『あーマジか……しょうがねぇな。サクラにはしばらく我慢してもらおう』 「そうだね。と言っても今はUSBの中だから意識ない状態だし。また電源入れたら年月飛んでてビックリするんじゃないかな」 『だな。……俺のボディーの方のサクラはどうだろう』 「うーん、今頃はもう完全にデータ消去されてるんじゃないかな。あのアサギのボディーが間違っても政府に使われないように、最後には自動でデータ消去してただの鉄の塊になるようにしてきたし……」 『やっぱえげつねぇなぁ……ま、あれはただのコピーだしな。元祖サクラのデータはこっちだし、まぁいいか』 「そうそう。だからぜーんぶ丸く収まったってことで!新天地でも頑張ろう!」 『はは、よく言う……政府の奴ら絶望してるぞ……』 「それこそ関係ないね。僕が大事なのはアサギだけだから」 『どーも。俺も一番大切なのはジェリーだよ。これからもよろしくな』 「うん。……あ、中立国の王都見えてきたよ!」 『おっマジか。楽しみだな~』 「ね。物価安いといいね」 そよ風に吹かれる一人と一機。笑い声が風に流された。 彼らの長い人生は、まだまだ旅路の途中である。
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