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とりあえず机の下から出てください、と彼女の首根っこをひっつかんで引きずり出した。同じクラスメートたちが“花見ちゃんがまたヘンなことしてる!”“机の下?え、机の下?そういうプレイ?”“そのうち慶介のズボンを引きずり落としにかかるに違いない”“うわあああんな美人の彼女いるのかよ慶介爆発四散しろ”とかなんとかいろいろ聞こえてくるのが嫌すぎる。残念ながら彼女ではないというのに。
ていうか、ヘンテコな方向に走りまくるのを置いておけば、花見は普通に美少女なのだ。とりあえず、二年生の間で妙に有名人になってしまうくらいには。
「それなら、普通にホラー系の舞台作ればいいだろ。パニック映画系にする理由はなんだよ」
よいしょ、と適当な椅子に座らされた花見は、ふてくされたように頬を膨らませた。
「決まってる。パニック映画ってのは、そのままバッドエンドで死んじゃうやつもあるけど……大抵は最終的に助かって、安心して、ハッピーエンドってのがミソだからだ。ホラー映画はまずさくっと死んでおしまいだろ?主人公だってバンバン死ぬじゃん。ヒロインはもっと死ぬじゃん。私は感動の涙を流したいのであって、悲しみの涙を流したいわけではないのだ」
「ああ、なるほど?感動的ハッピーエンドに至るための障害として、パニック的要素がほしい、と。それも壮大なやつが」
「そういうことだ!理解が早くて助かるよ」
むっふー!と誇らしげに胸を張る花見。背中を逸らした途端、立派な胸が大きく揺れてついつい視線がそちらに向いてしまう。こちらもなんだかんだいって健全な男子高校生なのだから仕方あるまい。
「お前が言いたいことはわかった。でもな、やっぱり現実的に可能な範囲で考えなきゃ駄目だって。特に秋大会、俺たち二年生は最後の本番なんだぜ?」
彼女の要望は理解できる。その上で、宥めるように僕は言った。
僕達演劇部は、三年生の春大会で引退だ。そして、高校演劇の本番は秋大会の方である。つまり、本番で戦えるのは二年生の今回が最後。生半可な舞台は作れないし、作りたくない。その気持ちは彼女も同じなはずである。
現実的に、物理的に、予算的に可能。かつ、顧問の先生の許可が下りるような常識的な話にしなければいけない。去年は先輩が性に奔放な男性が主人公の脚本を提出して顧問に叱られた事例があったから尚更に。
「花見も言ったように、パニックつったって大規模な災害とかを扱う必要ないんだ。それこそ、デスゲームみたいに閉じ込められる話でも十分パニックにはなる。そこからみんなで脱出して、感動的にハッピーエンドでもいいだろ?」
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