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春休みは皆と遊んで楽しかった。
ユリウスと一緒にラウルの実験の手伝いをした。
ラウルは将来大きな研究所で働くみたいで、怪しい発明をしていた。
命に関わるものはないけど、痺れたり変な薬で気持ち悪かったり死にそうにはなった。
ユリウスがラウルと喧嘩を初めてしまったけど、ラウルが楽観的だからすぐに喧嘩は終わった。
なんだかんだで、騒いでいたからいい思い出だ。
カノンはずっと教会で仕事をしていて、春休みの最後くらいしか遊べない。
教会に顔を出してはいるけど、あまり仕事の邪魔は出来ないから声を掛ける事は出来ずに見ていた。
やっぱり、カノンって神様のようだよな。
そう思っているのは俺だけではなく、皆がカノンを見て幸せな気持ちになるのが分かる。
天と地の差であるカノンと恋人同士だなんて、未だに信じられない。
でも、触れるだけのキスは何度もしてるから恋人なんだけどね。
カノンとの休日は何処に行こうかな、と思っていたら部屋に来てと言われて今、カノンの部屋にいる。
カノンが来るまで、椅子に座って何度も来て見慣れた部屋を眺めていた。
扉が開いて、カノンは紅茶と焼き菓子をトレイに乗せて運んできた。
「前に私に持ってきてくれたお菓子には劣るが、作ってみたんだ」
「カノンの手作り!?美味しそう」
カノンの作った丸い型のクッキーは、俺が作ったものよりも完璧なカタチだった。
一口食べると、優しい甘さが口いっぱいに広がってカノンみたいだなと思った。
紅茶を一口飲むと、カノンは下を向いていた。
なにか悩みがあるのかと紅茶のカップをテーブルに置いた。
もう付き合ってほぼ一年になるのに、言ってくれないのか?
カノンの顔をジッと見ていたら、一瞬だけ目が合ってすぐに逸らされた。
頬がほんのりと赤くなっている。
確かに学院ではクラスが違うし、寮も大部屋だから二人きりになるところは少ない。
久々に完全な二人きりになったから、意識した途端に緊張するよな。
「フォルテ、私達は付き合ってもうすぐ一年にぬる」
「う、ん…確かに」
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