好きだと伝わればいいのに。〜優斗サイド〜

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そもそも最初は顔と名前を知っている程度でしかなかった。高校が一緒で、同じクラスだっただけの関係でしかなかった。 もう二度と会うことはない。そう思い、忘れかけていた三年前だった。ゲイバーで蓮二と再会した。 『もしかしてお前、中原か?』 基本、ゲイバーに行く時は本名を明かさないようにしていた。というのも、優斗はゲイバーに本気で出会いを求めてはいなかったからだ。 当時、優斗は失恋したてだったのだ。大学から付き合っていた彼氏と別れ、自暴自棄になっていた。 寂しいー。 就職を機に、借りた古民家が酷く広く感じて、家という存在に押しつぶされてしまいそうで、だからゲイバーに行った。 身体だけでもいい、あの家に一人になりたくない。 けれど同時に自制心は持ち合わせていて、後にトラブルに巻き込まれないようにと細心の注意を払っていた。  だから、名前を呼ばれた時は焦った。ゲイバーに通い始めてもう数ヶ月は経っていた。もしかしたら酔いに任せて口を滑らせてしまったのではないか。そんな焦りが汗となりダラダラ流れそうになった時、『俺だよ、高校ん時同じクラスだった秦野 蓮二。覚えてねーか?』と言われた。 『秦野?って、陸上部の?』 『そう、それ俺な?いやぁ、覚えててくれてるって結構嬉しいな』 バーのまるで紫のような、大人怪しい雰囲気に似つかわしくない明るく無邪気な笑顔で微笑まれた。 不覚にも胸が音を立てた。 ダメだ、これ以上近付いたらー。 警鐘がなる。けれど、そういう時こそ人は抗えなくなるのだと自信を持って言える。 何故なら優斗は今までそうやってずるずると関係を持ってきてしまっていた。 (結局、自分のせいだ) スマホを持つ手をポケットに入れた。今日はメールを送らない、そう決意した。
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