とある彼女のRoutine

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「おはようございます」 私、諸伏奈々。27歳。某事務職。 今日のコーデは、白色のトップスに薄茶のパンツ、少し高いヒールを纏っている。 自慢ではないが、髪の毛はサラサラロングであり、遺伝で癖が付きにくい髪質らしい。おかげでセットの手間が省かるところだ。 「…さん、いまよろしいですか?」 職場では、なるたけ丁寧語で喋っている。というのも、例えば後輩にはタメ語で、先輩には敬語で…といった割合にいちいち頭を切り替えて話し方を変えるのが面倒くさいからだ。 苗字+さん、で話せば基本的には(ほぼ)間違いないし。 仕事を今日も黙々とこなしていくと、あっという間に終業の時間へ。 「お先に失礼します。お疲れ様でした」 挨拶を職場へ済ませ、真っ直ぐ駐車場へ向かう。 私の最高な平日の至福ルーティンは、車に乗り込んだ瞬間から始まる。 「…はぁ!疲れた!っと!」 いつもの自分のリミッターを解除する瞬間がとてつもなく好きだ。 ようは、今までのは【仕事用で表向き用の】私。 ここからは【自由気ままなプライベートの】私へ。 いつも左手に着けているゴムで、ひとつ結びにする。長めのポニーテールの完成だ。 「やっぱり、髪の毛邪魔だから縛った方が落ち着くわねー」 と、大きく独りごつ。おろしていた方が、かしこまった感があるのが好きなのだ。 「さーて、爆音でテンション爆アゲで帰りましょ!」 家までの帰路はおよそ20分。歌って帰るには丁度良いくらいの時間だ。 スマホをセットしミュージックアプリを開く。 最近は、学生の時にハマっていたボーカロイドに再びハマりだしている。 この前、私を好いてくれている(恋愛的ではなく普通に慕ってくれているという意味である)、有難い後輩さんからカラオケに誘われて、云年ぶりに行った。 まぁ、お察しのとおり彼女、バカ上手い。 もともと歌うことが好きで、あのアニソンの女帝と呼ばれている人のライブに一人で全通するぐらい歌が好きとは聴いてたが…それ以上の迫力だった。 J-POPでは、サウダージ、丸の内サディスティック、私は最強、とかも歌っていたな。 まだまだ歌い足らずと言わんばかりに、ボカロがとても好きなようで、色んな曲を振り付きで熱唱していた。 そこで歌っていた曲が気に入ったので、自分も覚えようと聴いているという、可愛い所もあるもんだ、と自虐する。 「1、2、3で、弾け飛んだ、固定概念、バットで打って、」 この曲。歌い方が難しいんだよなぁ。なんて考えながら赴くままに歌う。 一通りワンフレーズ聴き歌い終えたので、勝手に次の曲に変わる。 「この曲、待ってました〜!」 今、1番ハマっている曲が流れた。このアプリ、私の気持ちを分かってくれているな、とついニヤニヤしてしまう。 「半端な命の生命を、少々、ここらで、オーバーライド」 リズミカルなテンポが凄く好きな曲だ。この曲を聞くと、よく分からないが気持ちが前に進んで行けそうで、好きだ。 そうこう歌って運転してるうち、あっという間に自宅に到着した。 車庫にいれ、エンジンを切る。荷物を引っさげて降り、家へダッシュで飛び込む。 「たっだいま〜!」 私の声は空に消えた。今現在一人暮らしをしているが、毎回「いってきます」と「ただいま」は言うようにしている。言わないと、家に帰って気がしないから。 「アレクサ、ラジオをつけて」 はい、分かりました、と無機質な声が流れる。この空間にとっては機械音でも、私と会話してくれる優しい友だちみたいなものだ。 荷物をおき、お風呂の準備をする。ここでも私は風呂場へスマホを持ち込み(ジップロック愛用)、音楽を聴きながらシャワーを浴びる。気分がいい時は湯船にも浸かる。 10分でシャワーを済ませ、濡れた髪の毛を大きいタオルで巻き上げる。そうしておくことでドライヤー短縮になるから。これが、 「なかなか楽ちんでいいのよね〜」 独りごつ。なんだか言ってしまう。 夕ご飯は簡単な料理をささっと作る。 今日は早くゲームがしたかったので、ひき肉を炒め、それをピーマンに乗けて食べるパリパリピーマンwithひき肉炒め(ネーミングセンスが無いのはご了承頂きたい)を食らう。 お腹も空いていたので、一目散に食らった後、お皿をすぐ洗い、歯磨き、ドライヤー、保湿まで全て終わらした。 「さてと、今日も、やりますよ〜!」 実は私根っからのゲーマーなのである。太鼓の達人がとても大好きで、よくネットに潜って勝負をしたり、精度を上げる訓練をしていたりする。 あまり職場では言わないようにしているが、某ウチの職場の歌姫(後輩)に言ったら案の定「!?!?」と声にならない声でビックリされてしまった。 意外とショックだったが、その声にならない声は、彼女自身も私と同じようなドンだーであり、歓喜のあまり声が出なかったらしい。 何曲か譜面を叩いた所で、彼女からLINEが来た。 【お疲れ様です!一緒に試合しませんか?】 オンラインなのを見つけて飛んできてくれたのだろう、楽しい試合になりそうだ。顔が緩んでしまう。 【今部屋作ります!よろしくお願いします!】 マッチした後、ランダムで曲を選択し、お互いスコア勝負での対決をする。 およそ1時間プレイしただろうか、彼女から【疲れたので寝ます!楽しかったです!ありがとうございました!】と届いた。 【了解です!ありがとうございました!】と返信した。 私の至福ルーティンはまだまだ続く。深夜までプレイをして、疲れたら寝る。朝、起きるところまで私のプライベートな幸せが続いていく。
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