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「どっかすぐ切れるトコ…」
ヘアサロン検索で近場の美容院を探す。
「千尋、付き合えなくてごめん…行くわ」
希が手を振って教室を出る。
「あ、そっか。今日バイトだっけか?」
教室から次々に人が出て行く。
数センチ切り揃えるだけだし…そう思い一番安い所を選んで予約を入れた。
「千尋」
机の上に五千円札が置かれた。
「え?」
「美容院行くんだろ?」
「まぁ、うん」
「悪かったな」
「いいって、こんなの。元々切る予定だったんだし、揃えるだけだから」
立ち上がってバッグを肩に掛けた。
「どうせならバッサリ切って来いよ」
「…は?」
「らしくねぇ髪型してっからあんな事になんだよ」
「…らしく、ねぇ?」
「お前の髪は"黒で短い"んでいいんだよ」
「……あぁそうですかーはいはい」
「おい、金」
私は教室を飛び出した。
泣き顔なんて見られたくない。
黒髪ボブはお呼びでない…じゃないんだ。
川瀬千尋がお呼びでないんだ。
ワンチャン狙った茶髪なんて、もういらない。
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