1 いつもの

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1 いつもの

「ただいま。」  朝陽とともに兄の夏生(なつお)が夜勤のバイトから帰ってくる。  春海(はるみ)は飲んでいたコーヒの湯気でメガネを曇らせた。  いつもどおりの朝。いつもどおりの光景。コーヒーが少し、苦い。 「お帰りー」 「おかえりっ」 「お帰りなさぁい」  同じ食卓で朝食をとっていた父母と妹がばらばらに返事する。いつも通り。それから、 「……、」  春海は何も言わない。兄には絶対に言わない。これもいたって、いつも通り。
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