7人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
1 いつもの
「ただいま。」
朝陽とともに兄の夏生が夜勤のバイトから帰ってくる。
春海は飲んでいたコーヒの湯気でメガネを曇らせた。
いつもどおりの朝。いつもどおりの光景。コーヒーが少し、苦い。
「お帰りー」
「おかえりっ」
「お帰りなさぁい」
同じ食卓で朝食をとっていた父母と妹がばらばらに返事する。いつも通り。それから、
「……、」
春海は何も言わない。兄には絶対に言わない。これもいたって、いつも通り。
最初のコメントを投稿しよう!