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「やっほー!」
「……悪いな、休日に呼び出して。」
「ぜーんぜん。俺こういうの大好きだから。となりが黒川のお兄さん? と、こっちは妹ちゃんか〜! はじめまして〜西春です!」
西春は市役所でのスーツ姿からは想像もできないほどにカジュアルな服に身を包んでいた。奇抜な組み合わせの靴と小物だが嫌味はなく、清潔感も統一感もある。ひと目見て、服が好きだということがわかる格好だ。
その西春を目前に、夏生の目は白黒していた。
「春海……あの……この人……?」
「ごめん……兄ちゃん、友だちが来るっていうと嫌がると思って。内緒にしてた。でも俺よりよっぽどこいつのほうがいい服選ぶと思うから、つきあってくれる?」
「そーゆーこと! お兄さん、今日は俺に任せといてくださいよ!」
「ええっと……」
「はいっ! 行きましょ行きましょ」
たじろぐ夏生の手を強引に引き、西春はモール内へと元気いっぱいに飛び込んでいった。
冬火が脇腹を小突く。
「……春海ちゃん、あの人、大丈夫な人?」
「まあ……ちょっとチャラいけど、俺と同じ役所務めだし……服は詳しいよ。服好きすぎて借金してるらしいけど」
「まじか……」
兄妹の会話を知らないまま、西春は早速一つ目の店に吸い込まれていった。
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