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最後に西春と冬火の個人的な買い物に付き合ったあと、夏生のおごりで全員でアイスを食べた。
夏生はマシュマロのはいったチョコレートアイスを頼んでいた。子供っぽい選択だと思ったが、ちょうど春海も同じものが食べたかったので同じアイスを注文した。
歩き疲れた身体にチョコレートアイスはよく沁みた。
「ねぇお兄さん、デートって聞きましたよ。彼女さん、どんな人なんですか?」
夏生は一瞬、目を丸くしたが、すぐにチョコレートのように微笑む。
「みんなが思ってるのとは、ちょっと違うと思うよ」
「へー?」
「……でも、そうだね、いい人だよ。なんていうか、他意はないんだけど……雰囲気は西春くんにちょっと似てるかも」
「「えっ」」
その瞬間、春海と冬火の手が止まった。
「……、兄ちゃん、連帯保証人にはなるなよ……」
「借金だけはだめよ」
「え? うん、え??」
四人の戸惑いと静寂を、モールの喧騒がゆったりと包みこんだ。
知らないことばかりに出会った気がした。
西春似の彼女。
どんな人なんだろうか。
春海の期待を、ゆっくりとチョコレートアイスが溶かしていく。そのうち会えるかもしれない。
暮れていく光が、窓から四人のテーブルを照らす。
眼の前で、夏生も冬火も、ついでに西春も笑っている。
春海は黙ってその光景を見つめていた。
〈了〉
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