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「そこ大事だと思うけどなぁ。デートなのか、ほんとに遊びに行くだけなのか。それで服、ぜんぜん違うんじゃないの」
春海はとりあえず、今の西春の言葉をスマホにメモを取った。
・デートかどうか。
これはあとで冬火にでも聞いておけばよい。
「ま、なんにせよその知り合いのために服選んであげなきゃね。こういうのどう」
スマホでファッション投稿サイトの写真を出してくる。
シンプルで、春海のクローゼットにも似たようなものがあるから、真似はしやすそうだ。
「あとこーゆー雰囲気とか……これとか最近流行りだよ」
次から次へと写真が出てくる。色々出して、好みを探っているようだ。ときおり検索ワードを変えては春海に見せてくる。
「詳しいな」
「まぁ、好きだしね。あと金かけてるし」
「どれくらい?」
「こないだはじめてローン組んだ」
「うわ、」
着道楽のファッションマニアだと聞いていたが、なるほどその通りのようだった。借金までして楽しもうという気概が春海にはまず理解できない。
「で、どう? なんかピンと来るコーデあった?」
「ピン……、いや、なんていうか……違いがわかんない」
「ええ? 全部違うけど。どれがその知り合いに似合いそうとか、逆に嫌いそうとかないの?」
「……、ない、」
「あっそう……あ、火曜だよね? 天気は晴れだな。ん、夜少し寒くなるかもね。時間は? 昼なんだっけ? アウターいる?」
それもわからなかった。スマホのメモを追加する。
・時間帯。
西春は続けざまにいくつかの質問をした。その殆どが春海にはわからないものだった。
メモが増えていく。
・好きな色。
・好きなテイスト。
・NGなテイスト。
・アクセサリーをつけるかどうか。
・日焼けの程度。
・体格。
メモの行数が肥大化していく様子を、西春が呆れたように見つめていた。
「黒川お前、よくその情報量で服選ぼうとか思ってんな」
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