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後日談
先日課長と飲みに行った時に俺が言われた話である。
彼を俺の下に付けた理由は、俺であれば彼の口の上手さに丸め込まれないと思ったからだそうである。
俺も転職組であるのだが、実はその採用の決め手は話術に長けていたことであったらしいのだ。要は口が上手かったと言うことになる。
「俺も口だけですか?」
俺がそう聞くと、
「お前は、最初から見どころあると思ってたよ。口が上手いってことは頭の瞬発力があるってことだからな。まあ、それだけだと彼と一緒だが、お前は仕事に前向きだったからな。若干納得させるのに苦労はしたけどな…」
言われてみれば仕事に馴染むまでは大変だった。だが、失敗もあったが、俺は褒められることがあっても、課長から怒られたり、口うるさく言われた記憶が殆ど無い。
「そう言えば、俺は課長か怒られた記憶が無いんですけど」
そう言うと、
「お前こそ、褒めて伸びるタイプだからな。褒めて伸びる奴は、仕事に前向きで自ら高めようとしている人間だけであって、やる気云々を自ら言ってるような人間が褒めて伸びる訳がない。そこがお前と奴の違いだ」
そう言って、彼の後始末に大変だったはずなのに課長は笑い飛ばしていた。
俺は改めて自分と課長の器の違いを感じさせられてしまっていた。
恐らく課長は最初から、彼の事を見抜いていたのだと思う。
その上での対応だったのだろう、そんな気がする。
この時、飲みに誘ってくれたのも何も言わないが俺に対する慰労会だったのだろう、そう思う。
ホント、大雑把に見えて細目で気の利く課長である…
<終わり>
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