担当物件

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担当物件

 翌日、実際に担当させる客先に同行させると、彼は自信満々な姿勢を見せて嬉しそうである。  度胸はあるようだが、どうも俺の事前説明を理解しているのかは疑わしく思える。彼から受ける質問は客先や実務の事ではなく、交通費や昼食の話ばかりなのだ。  一々その姿勢を指摘するのも面倒なので、俺は彼の理解度は無視をして淡々と自分の役目を果たして行くことに徹することにした。  そんな彼なので、俺は中途採用としては長めの1か月の同行を実施。俺としては根気よくみっちりと実務教育をしたつもりではある。  理解度は分からないが、いつまでも同行と言う分けにはいかないのだ。  ただ不安だった俺は課長と相談の上、かなり易しいシステムを1件だけを任せることにした。  彼はその任された1件にやたら張り切って見せていたのだが、何かその姿に俺は嘘くささを感じてしまったのだが…彼にも稼いでもらわなければならないのだ。  彼が担当物件を持って2週目の週末を迎えた。  分からないことは直ぐに聞くようにと、何度も伝えたにも拘らず一向に何の助けも求めて来ない。  もちろん預けっ放しではなく、週末毎に進捗状況の報告は受けることにはしていた。  前週は初めの週と言う事で期待はしていなかったが、任せたのはたったの一件、それも超簡単。2週目となれば多少とも進んではいるはずである。 「山野さん、任せた物件はどうなった?」 「それが、アポが中々取れなくて進んでないんですよ」 「そうか?その割に外出はしてるようだけど」 「一応顔だけは出そうと思いまして」  そんな話をしている最中に、経理課の女性が彼の元にやって来た。交通費精算に対するクレームである。  なんでも、今週頭にあった研修の際に利用したタクシーのレシートに裏書をしていないと言うのである。  話を聞くと、研修に行った際に会場が見付からなく、遅刻すると拙いのでタクシーを利用したと言うのだが、まずスマホに地図が見れる時代にそれは嘘くさい話である。  まあ、それは既に課長が多めに見た事なので見逃すとするが…つまらない事で面倒事を起こす奴である。
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