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「秘書は社長秘書で社長の部下な。社長の業務を代行するのも仕事。彼女は他部署。お前の仕事の代行をする義務はない。それに彼女は主任でお前より役職的に上。お前が仕事の指示をする立場ではない」
「じゃあ、それだと精算の依頼も出来ないってことにならないですか?」
「それは出来るだろ」
「なんで?」
「会社で決めた業務だからだ。文句があったら、課長に言え」
「・・・」
彼は何故か強面の課長には何も言えないのだ。
彼女がタクシーのレシートを彼のデスクに不機嫌に置くのを見て、俺はその機嫌を緩和させることにした。
「これは初めてですか?」
「3度目です。今までは注意だけして私が口頭で確認して記入してました」
「そうですか…」
担当物件を持つ前に2度もタクシーを使ったことに腹を立てた俺はつい軽口を叩いてしまう。
「…じゃあ山野さんは罰として、3回書かなかった訳だから階段3階分だから、え~と、1階から4階までをうさぎ跳びで登ってもらおうかな。
おっと、これは会社の決まりじゃなくて、俺の独り言ね」
俺の言葉に彼女は大笑いで喜んでくれた。実際にうさぎ跳びなどさせられるわけがないので、この笑いが彼にとっての罰ともなり彼女の心も癒える事になる訳だ。
あと、この際だからもう一つ忠告を…
「それと高い経路を敢えて使わないで、俺が同行した時の経路を使うように。課長は分かって様子を見てるだけだからな」
恐らく実際は俺と同じ経路を使っているのだろうと思う。それを高い経路で清算しているのだろう。
あからさま過ぎることはバレるに決まっているのに、どういう思考回路なのか不思議でしょうがない。
本当は課長に怒られるまで放って置こうかと思っていたのだが、つい教えてしまった。
これも俺の人の良さかな?と思っていたら直ぐに彼の反論が始まる。
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