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僕は、大人になってから癌が見つかって入院をしていた。若いのに癌だなんて、なんて人生だと思うよ。娘は僕と遊びに行けなくなったことにより時間を持て余したから最近ピアノのお稽古を始めたようだった。
今はまだ、両手で簡単な曲を弾くのがやっと位だけどそのうちもっとたくさんの曲が弾けるようになるのだろう。僕は入院していて直に聞くことはできないけれど発表会の動画を持ってきてくれるのを楽しみにしてるんだ。
「私パパのためにお歌作ってあげるね。楽しみにしてて!」
その言葉でふと思い出したんだ。ずっと前にあったあの子の事。あの時の歌詞も曲もよく覚えていない。でも、その子が歌声だけは今でも覚えている。綺麗な声だった。
優佳が僕のためにつくってくれた曲。
あんなに悩んでたんだ。きっと頑張って考えたんだろう?
あの日、優佳が僕に会いに来たってことは君が最高学年に上がる頃は、僕はもういないのかもしれない。
でも、あと少しだけ、少しだけ優佳のために頑張るよ。
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