襲撃    

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 あまりの事態に困惑し絶句しながらも辺りを見渡した彼は、鈴芽を獣のごとく睨みつける。 「これはなんだ……! 説明しろっ……!」 「こいつも殺してやろうか」  新太へ銃口を突きつけ、鈴芽は嘲るように笑ってみせる。 「何が目的だ!」  伊織が階段から駆け下り、そう声を荒げた刹那。  パァン! 銃の音と共に、鈴芽の銃が弧を描いで吹き飛んでいった。 「あら、た……?」  銃を構えていた人物は、もう1人。新太しかいなかった。  鈴芽が手を抑えてうずくまっている間にも、新太は彼から銃口を逸らさない。  その構えは安定しており、沈着(ちんちゃく)に鈴芽を狙い続けている。 「あらた、なぜ、銃を」  その場の静寂に伊織が金目銀目を開けて呆然としていると。  コツ、コツ、と小気味のいい足音が廊下の向こう側から近づいてくる。 「やぁ鈴芽兄さん。……約束と違うじゃないか」  黒髪に黒目、伊織にそっくりなスーツ姿の男。すらりとした細身を揺らしながら、平然と血を踏みつけて歩いている。  八ノ宮洋蘭という名の男だった。  彼は満身創痍の鈴芽を見下し、この殺伐とした空気には似合わぬ上品な笑みを浮かべる。 「新太は傷付けるなと言ったはずだ。撃つなんて規約違反にもほどがあるよ。……それになんだい、撃たれてるじゃないか。情けないなぁ」  呑気な口調の洋蘭を見上げ、鈴芽は「あぁ?」と不機嫌に声を荒げる。 「銃が使える奴だなんて聞いてねぇぞ!」 「……僕だって知らないさ。ね、新太くん」  にっこり新太へ微笑む洋蘭。だが新太は真っ直ぐと銃口を洋蘭に掲げ、三白眼でギリギリと睨みつけるばかり。  そんな様子の新太に洋蘭は微笑みを崩さず、「おー、こわいこわい」と手を振った。 「そんな危険なもの、キミには似合わないよ」  サッと目に見えぬ速さで新太の腕を掴み、洋蘭は拳銃を速やかに奪う。  ついでと言わんばかりに新太の後頭部を軽く殴り付け、その場にそっと寝かしつけてしまった。
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