失せ人さがし    

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   伊織も腕を組んで榊原のとなりに座り込みながら、パソコンを覗き込んだ。 「急ぎで頼む。依頼人がここに染まってしまう前に」 「ってことは……この子、信者じゃねぇんか!?」  榊原が新太を見ながら頓狂な声を上げる。伊織は「声が大きいよ」と耳を抑えながら、 「訳あって友達を出してやりたいんだとさ。まぁ私はここの生活も悪くないと言ってみたんだけどね」 「よく言うぜ……」  呆れ返ったように呟く榊原。  その会話に違和感を覚え、新太は思わず問いかける。 「伊織、そのおっさんって……ここの信者だよな?」 「肩書きはね。実は榊原もね、今のキミと同じように信者のフリをしている者だよ」 「それって、どういう」 「あーーー分かったぞ! その牧野湊の居場所!」  急に声を上げた榊原の肩を、伊織が思い切り叩く。 「声が大きいんだって!」 「あーあー悪いって。そうカリカリしなさんな」 「湊の居場所、分かったんすかっ?」  新太が榊原に問いかけると、「おうよ」と彼はうなずく。 「その子の居場所だけどな、今ちょうど外回りの営業中だ」 「営業中……?」  首をかしげると、伊織もうなずいて窓へ目をやる。 「蜂玉園やここの商品を宣伝して回ってるんだ。あれだね、いわば宗教勧誘だよ。それを一日中やる役職に就いたんだ、キミの友人は。……好みの男がいなくてもソレをするってことは、相当ここを信じ込んでいる。本当に真面目な性格のようだね」 「じゃあ湊と会うには、どうすれば」  榊原が「そうだなあ」と耳をかきながら、こちらを見据えてくる。 「外で待ってりゃいい、日が暮れりゃじきに帰ってくる。でも……期待はすんなよ」 「え、なんで……誰かを好きになって離れられないってより、よっぽどマシなんじゃ」 「まぁ会えば分かるさ。……幸運を、祈っているよ」
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