敵討ち    

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 ***  無事に蜂玉園の本家を去って、伊織と3時間の道のりを経たのだが。 「無理なんだって!」  飲食店の前で激しく首を降る伊織に、新太は「声デケェよ」と注意しながら彼の腕を引っ張る。 「店の中に入るくらい大丈夫じゃねぇの?」 「だめだ! こんなところ他の信者に見つかったら大変なことに」 「そんな暑苦しい格好しといてか?」  こく、と伊織はうなずきながら、頭を(おお)っているフードをさらに深く被ってしまう。  その様子に新太は首をひねって頭をかいた。 (夏に長袖フードつきのパーカーって、見てるこっちが耐えられねぇって)  呆れていれば、伊織が周囲を見渡して小さな声で呟いた。 「この金目銀目(きんめぎんめ)諸刃(もろは)(つるぎ)なんだ。人を魅了する代わりに目立ってしまう」 「キンメダイがなんだって?」 「あぁもう」  よく分からないが、とにかく外食している姿を他の信者に見られたらマズいらしい。  新太はしばし考え、「あっそうだ」と手を叩いた。 「なんか買って俺ん()で食おーぜ! 1人暮らしだから誰にも見られねーし」 「……それなら、ありがたい」
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